✅ポイント
1.「英才」=天才ではなく、「1人ひとりの内なる才覚」をいいます。
2.「苦手」なモノゴトはソコソコに、「強み」の伸長にリソースを集中させていきます。
3.「福祉的支援」×「強み教育」で、脱平均(個性化)とした特化型の学習支援を行います。
4.「支援される子」から、「社会で活かされる子」への革新性を探究します。
1.定義
ここでいう「英才学習」とは、すべての児童生徒が持つ「固有の強み」や「潜在的な可能性」を発見し、それを意図的(仕組的なプロダクトとして)に伸ばすことで、苦手や障害特性による生きづらさを相対的に軽減し、キャリア形成から社会的な接続へと拡張していく、学習における世界モデル的なアプローチ手法となります。
このアプローチ手法は、不得意やネガティブ課題に対して過度に焦点を当てるのではなく、興味関心・好き得意な領域に積極的にフォーカスして実務的な能力へと深化することで、自己肯定感や社会的役割を確立し、無理なく自分らしい生き方を実現することを目的とするものです。
2.背景と意義
■従来型支援の課題
発達障害や境界知能などを有する児童生徒に対する従来型の支援では、「できないコトを出来るようにする補償的なアプローチ」に偏りがちなことが往々にしてありました。
その結果、本人の目的意識や必要性の形骸化、モチベーションの低下や苦手の克服に追われる日常が生じやすく、社会的な環境や求められる人間関係はより複雑になっていくのに対し、自身は成長を積み重ねしている自覚を得られず、達成感や承認欲求が満たされないまま時(とき)だけが過ぎていくと云うギャップが発生しています。
■英才学習の意義
「英才学習」とは、「強みを軸に弱みを包摂する」発想となります。
・強みが伸びることで始めて、苦手領域の影響が相対的に小さくなっていきます。
・得意な分野とは、自身をもってキャリア形成や不特定の地域社参加に接続できるものです。
・その成果や承認体験を通じて自己肯定感が強化されることで、「ネガティブな因果」は「ポジティブな結果」として進化していきます。
3.基本原則
1.強み発見の徹底
・認知特性・感覚特性・興味関心・行動パターンなどを精査し、「本人が自然に集中できること」「努力感なく継続できること」を特定する。
2.得意の積極的伸長
・学校の教科学習に限らず、芸術・スポーツ・IT・創作活動など、幅広い領域で強みを伸ばすプロセスを設計する。
3.苦手は「そこそこ」でよい
・苦手分野は、最低限の社会的な適応水準を確保すれば十分と考え、リソースを過度・無意味に割かない。
4.キャリアへの橋渡し
・得意分野を「役割」や「職能」に接続させる仕組みを整備し、早期に成功体験・社会的役割・社会的実践が得られるようにする。
4.モデルの特徴
■教育現場での特徴
・個別の学習計画に「強み領域」が必ず盛り込まれる
・非認知的な成果を「見える化」し、承認の機会が増やされていく
・横断的に強みを活かす接続プロダクトが用意されている(例:数学が得意ならプログラミング授業に接続)
■相談支援での特徴
・支援計画に「ストレングス セッション」が組み込まれている
・保護者への説明時に「苦手の補償型」ではなく「強みの伸長型」として構成されている
・社会資源(人的・物的・経済的・情報的・文化的)と、児童生徒の有する強みが接続される
5.期待される効果
■本人の自己肯定感の向上
■二次障害(不登校・うつ症状等)の予防
■家庭と学校・地域の連携強化
■将来的なキャリア発展と社会的自立など
6.まとめ
「英才学習」とは、単に学力を伸ばす教育的なモデルではなく、「①強みの発見⇒ ②得意の伸長⇒ ③キャリア接続」を通じて、児童生徒が自分らしく生きられるための、包括的(一気通貫型)で構造化された支援のあり方を示します。
その支援の本質とは、「弱みを直すあり方」から、「強みを生かすあり方」とした個への転換にあり、現代の「インクルーシブ教育」や「地域支援モデル」の中核に位置づけられるものとして、発達支援における世界モデルと認識され始めています。