
児童生徒の「マルチ能力」とは
定義
「マルチ能力(Multiple Intelligences)」とは、アメリカの教育心理学者ハワード・ガードナー(Howard Gardner)が提唱した「多重知能理論(MI理論)」に基づき、それを更に教育現場向けに発展・普及させたのがトーマス・アームストロングです。
彼は、「すべての子どもには多様な知能があり、それぞれがユニークな組み合わせで能力を持っている」と述べました。
アームストロングの「8つのマルチ能力」
アームストロングは、以下の「8つの知能(マルチ能力)」が子どもたちに存在すると説明しました
| 能力の名前 | 特徴・得意なこと | 支援例 |
|---|---|---|
| ① 言語的知能 | 言葉の使い方、読書・作文が得意 | 絵本作成・ディスカッション |
| ② 論理数学的知能 | 数や論理の理解、問題解決 | パズル、論理ゲーム |
| ③ 空間的知能 | イメージ化、図や地図が得意 | レゴ、絵画、デザイン |
| ④ 身体運動的知能 | 体を使った表現が得意 | ダンス、演劇、運動遊び |
| ⑤ 音楽的知能 | リズムや音の感受性が高い | 歌、楽器、音遊び |
| ⑥ 対人的知能 | 他人との関係構築が得意 | グループ活動、話し合い |
| ⑦ 内省的知能 | 自分の感情や思考をよく理解する | 日記、気持ちカード |
| ⑧ 自然理解知能 | 自然への感受性が高い | 生き物観察、自然遊び |
マルチ能力とは「可能性の地図」
アームストロングの理論に基づくマルチ能力は、「全ての子どもには、光る場所がある」というメッセージです。
学力やIQだけでは測れない、「その子だけの原石」を見つけ出し育む事が、現代の支援教育や福祉の要であるとも言えます。
【1】マルチ能力を育てる為に必要な事
1. 発見と可視化
●子ども一人ひとりの「得意」や「反応」に気づき記録する。
●「これが得意かもしれないね」と言葉にして伝える? 自己理解の第一歩(IDMモデル)。
2. 尊重と選択肢の提示
●「このやり方でもいいんだよ」と選べる環境づくり。
●画一的な教育や支援ではなく、「多様な表現」を認める? 自己肯定感の育成(HEART・REZモデル)。
3. 体験・実践の場を用意する
●学びを「実感」に変える体験が重要。
●興味を持てるよう、遊びや物語、活動と結びつける? 能力の定着と行動化(HOPE・Transformational)。
【2】能力別に見る育み方と効果の例
| 能力名 | 育てる方法 | 期待される効果 |
|---|---|---|
| 言語的 | 詩を書く、話す練習、読書会 | 表現力・対話力の向上、自己発信力 |
| 数理的 | パズル、計算、因果関係を考える遊び | 問題解決力、思考の柔軟性 |
| 空間的 | 図解、工作、絵を描く | 想像力・設計力・集中力 |
| 身体運動的 | ダンス、演劇、体験活動 | 自己調整力、表現の豊かさ、健康 |
| 音楽的 | 楽器、リズム遊び、歌 | 感性の育成、記憶力や集中力の強化 |
| 対人的 | ロールプレイ、グループ活動 | コミュニケーション力、協働力 |
| 内省的 | 日記、自分の気持ちを言葉にする | 自己理解、ストレス対処力、意思決定力 |
| 自然理解 | 自然観察、野外活動 | 五感の発達、命への感受性、探究心 |
【3】それらを未来の「成果」へ繋げるには?
① 「能力」から「役割」へ繋げる
●「得意=社会で活かせる可能性」と認識させる。
●例:「絵が得意 → デザインで人を笑顔にできる」。
② 「表現する機会」をつくる
●展示会・発表会・対話イベントなど、他者と共有する場をつくる。
●例:「自分の力が誰かの役に立つ」と実感できる。
③ 成長の物語として記録する
●スクラップブック・ポートフォリオ・映像などで「過程」を見える化。
●例:「できた」の積み重ねが、進路や就労意識にも繋がる。
【4】効果:マルチ能力育成が未来にもたらすもの
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 自己肯定感 | 「できることがある」→ 自分を信じられる |
| アイデンティティ | 自分は誰か?何が好きか?が明確になる |
| 生きる力 | 状況に応じて自分の強みを生かせる柔軟性 |
| 職業的自立 | 多様な職業選択やスキル活用のベースに |
| 社会的つながり | 他者との共感や協働が生まれやすくなる |
| 未来の夢 | 「自分らしい未来像」が描けるようになる |
まとめ
「マルチ能力」とは、子どもたちの「可能性の地図」であり、その地図を読み解き、選択肢の見通し(意思形成・意思決定のため)にアドバイスするのが案内人の役目です。
そして、時としては経験値や評価分析などから、少し強めに背中を押すことが我々の役目でもあります。

