進路選択な岐路


発達障害や境界知能の児童生徒の中には、小学校や中学校では「一般校の支援級」などに在籍できる子供たちも多くいますが、「高校」では一気に選択肢が狭くなり、その大半が特別支援学校や養護学校へ進学していく様子が見られています。


高校進学での選択肢が狭くなる理由

✅小・中学校(義務教育)までは「支援級」という柔軟な選択肢がある

⚠️高校に「支援級」という仕組みがない

●高校には「支援学級(支援級)」という制度は、基本的には存在しません

●通常の全日制高校には、「特別支援コーディネーター」はいても、構造的な支援体制が薄いのが現状です。


その結果、選択肢はこうなる

■特別支援学校の高等部(いわゆる養護学校)、高等特別支援学校(就労準備系)。※一般的な「高卒扱い」とは異なる。

■定時制・通信制高校(発達特性に合う柔軟な学び方が可能なケースも)。

■私立高校の一部で特性に理解のある所(かなり限られる)。

■一般の高校へ進学 → 高いハードル・サポートの不十分さで中退や不適応(不登校など二次障害)のリスク。


どうして「一般の高校に行かせてあげたい」と思うのか

多くの親御さんや子ども自身が、心のドコかでは特別な場所では無く、できれば一般へ進学する(させてあげたい…)事を望んでいます。

「普通」を経験させてあげたいという親心

●「できれば定型発達の子たちと同じように過ごしてほしい」。

「高校で一般校に通えたら、将来の選択肢も広がるかもしれない」

これは、愛や希望に満ちた願いであり、否定すべきものではありません。


子ども自身の「普通でありたい」気持ち

●「友だちと一緒にお揃いの制服を着たい」

●「文化祭や部活などの青春を楽しみたい」

●「自分だけ違う場所に行くのはつらい」

→ 特に、思春期の「他者との違い」への敏感さは、後に大きく影響してきます。


「一般校=可能性のある進路」という社会構造

●大学進学に就職など、「偏差値/内申」「学歴」が根強い日本社会。

●「特別支援学校=進路が限定的」という現実的な社会観。

●親も子も、「将来を狭めたくない」という想いが背景にある。


一般校には行けたけど続かなかった例も

●最初は頑張って通っていたけど、次第に不登校・メンタル不調に…。

●支援のない環境で、過剰な自己責任を求められて疲弊。

●「やっぱり合わなかった…」と、本人が自己肯定感を失うリスク。

●刺激的な遊びや固執する関係(友人等)に影響され、不規則な生活になる。

●睡眠がとれない(気になる事、不安な事があると、なかなか寝付けない)。

●身だしなみを整える事ができない(ひげの剃り残しが多いなど)。

●寒くなっても薄着のままでいるなど、季節に合わせた適切な衣服の選択ができない。

●ストレスを抱えている事が自覚できず、胃痛・頭痛・体の重さ・思考停止等の体調不良が生じてしまう​。


一般中学の支援級卒業後に関する統計データ

中学校「特別支援学級の卒業生」進学状況

昨今の文部科学省調査によると、中学校で特別支援学級を卒業した生徒の進学率は94.8%であり、そのうち56.9%が一般の高等学校等に、37.8%が特別支援学校高等部に進学しています。


特別支援学校高等部の卒業生「大学等」進学率

大学・短期大学への進学率:​約2.0%。

●教育訓練機関等への入学を含む進学率:​約3.2%。

※なお、一般高校を単位履修した生徒の「大学等進学率」は全体で60.8%と見込まれており、特別支援学校を卒業した生徒の「大学等への進学率」は、「一般高校の卒業生」と比較して、大幅に低い事が報告されています。​


✅まとめ

一般高校卒業生の大学進学率は約60.8%であるのに対し、特別支援学校卒業生の大学進学率は約2.0%と大きな差があります。

​この差は、教育体制や支援の違い、受験資格の制限など、さまざまな要因によるものです。

​進学を希望する特別支援学校の生徒に対しては、早期からの進学支援や情報提供が重要となります。

発達障害のある学生の大学卒業率は68.3%(入学率ではない)であり、他の障害種別と比較して低い傾向にあります。

●また、大学卒業後の就職率も他の障害種別と比較して低く、進学先や支援体制がその後の就職や生活に影響を与える事が示唆されています。​


<特別支援学校高等部卒業後の進路(2018年データ)>

就職:​31.2%(1年後の就労定着率は約1/3)。

●社会福祉施設への入所・通所:​61.1%。

●進学(大学・専門学校等):2%。

●教育訓練機関等への入学:1.6%。

これらのデータから、特別支援学校高等部を卒業した生徒の多くが、進学よりも就職や福祉施設への進路を選択していることがわかります。​


就労と収入に関する現実

就職状況

障害者雇用枠(狭き門)での就職は、職種や業務内容が限定される事が多く、一般就労に比べて収入面での差が生じる場合があります。

●福祉的就労(就労継続支援A型・B型など)では、工賃が最低賃金を下回るケースもあり、経済的自立が難しい事があります。

収入と生活の質(QOL)

●一般就労に就いた場合でも、職場での支援体制や理解が不十分な場合、長期的な就労継続が難しく、結果として収入の安定性に欠ける事があります。

●特別支援学校卒業生の多くが福祉施設に通所している現状から、経済的な自立は難しいケースが多いと考えられます。​


進路選択の重要性とその後の人生の影響

高校進学時の選択は、その後の就労機会や生活の質に直結します。

​特別支援学校を選択した場合、手厚い支援を受けられる反面、進学や一般就労の機会が限定される可能性があります。

​一方、一般高校を選択した場合、進学や一般就労の道は開かれる可能性がありますが、支援体制が不十分な場合、学業や就労の継続が難しくなるリスクもあります。​


✅個々の特性に応じた進路選択の重要性

高校進学時の選択は、単なる学歴の問題ではなく、その後の就労機会、収入、生活の質に大きな影響を与えます。

​そのため、個々の特性や希望、家庭の状況を踏まえた進路選択が重要です。

​また、進学先での支援体制や将来の就労支援の充実度も考慮する必要があります。​


結局、特別支援学校? or 一般校?

どのような選択をしようとも、いずれ社会へ自立し、生活していく事は同じであり、非常にリアルな真実です。


結論

「特別支援学校」か「一般校」か──

社会に出た時の「困難さ」は、どちらを選んでも「ゼロにはならない」。


共通して起きやすい二次障害・困難さ

✅対人関係でのギャップ

●空気が読めない/読みすぎて疲れる。

●表情や言葉のニュアンスを誤解される/誤解する。

●過去の「傷」がトリガーとなり、心を閉ざしてしまう。


✅精神的不調(うつ・不安・適応障害・自傷など)

●自分の「特性」を受け止めきれず、自己肯定感が崩壊する。

●他者と比べて「できない自分」に苦しむ。

●過去の否定体験がフラッシュバックのように蘇る。


✅社会適応スキルの不足

●時間管理や金銭管理、生活のルールに馴染めない。

●上司や同僚との距離感に悩む。

●ミスへの対処や切り替えが苦手で自己嫌悪が強まる。


つまり「進路の選択」=「問題の解決」ではない

●特別支援学校を卒業したからといって、社会での困難が無くなるわけではない

●一般高校を卒業したからといって、社会での困難が無くなるわけでもない

●むしろ、「どちらを選んでも、それぞれの困難が待っている」のが現実。

●進路の選択肢は「困難の種類」を変えるだけ。

●真に大事なのは、「その子が困難に出会った時、ドコに戻り立ち上がれるか」。


✅でも、あえて言うなら──

一般の高校を選んだ方が、「社会的な選択肢」が広がる可能性は大きい。

▫進学率は高い(大学進学率 約60%)。

▫就職先の幅が広がりやすい(学歴フィルターが存在)。

▫「普通の進路」として社会で通用しやすい。

▫家族も「将来に希望が持てる」と感じやすい。

❓「この子にとっての可能性とは何か?」・・・

❓「幸せに生きる力とは何を指すのか?」・・・

一般校が「可能性の広さ」を、特別支援校が「根っこの太さ」を育てる。

そして本当に大事なのは、「どちらかを選んでも、もう一方の良さを補える仕組みがある事」です。


ゆえに

未来は、与えられるモノではない。

「育まれる環境」の中で、少しずつ拓いていく。

進路は「選ぶ」モノではなく、その子と一緒に「創っていく」ものである。


だから進路を問わず…

●「困った時などに戻れる居場所」が、人生には絶対に必要。

●「挫折の先にも希望はある」という、ロールモデルを社会に示す事が必要。

●「困る事=悪ではなく、そこから更に育つ」という、文化を育てる事が必要。


諦めを抱えやすい親子の特徴

1.度重なる「環境不適切経験」がある ➡ 「自己否定」や「学習性無力感」が強まっている。

2.未来が具体的に描けない 「希望の設計図」が無く、具体的に動けなくなっている。

3.支援を受けても「意味」を実感できなかった ➡ 「支援=お飾り」と感じてしまい、信じる力を失っている。

4.「普通」という幻想が壊れた時、再構築されていない ➡ 「じゃあ、どうしたらいいの?」が宙に浮いている。

5.相談相手がいない or 一人で抱えすぎている ➡ 「どうせ私たちは…」と、諦める土壌ができあがっている。


メッセージ

でも、「希望が見えた瞬間」、人はもう一度、動き出す。

「諦め」は、心が「これ以上傷つかない為」の、正常な防御反応です。

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