
低学年と高学年など、発達段階を無視した環境設定や支援のあり方には、単に「効果がない」だけではなく、「誤学習(maladaptive learning)や、二次的な困難の固定化」に繋がるリスクすらあります。
❗なぜ「環境設定のミス」が誤学習を生むのか
1.発達段階と不一致の環境→「失敗体験の反復」
たとえば…
●低学年の子に「静かに座らせる」事ばかり要求すると、→「自分は出来ない」「怒られる」「学びは辛いもの」という「誤った学習」が生まれやすい。
●逆に、高学年になっても「騒がしい環境」で抑制のタイミング(空気感)が少ないと、→「気分で動いても許される」「落ち着く必要性がない」など、社会的な学習のズレ(ギャップ)が起きる。
これはまさに、「発達のタイミングに合った経験が積めなかった」事で、不適応な行動パターンが強化されてしまう状態です。
「誤学習」の具体例とその後の影響
| 環境の誤り | 子どもの誤学習 | 二次的な影響 |
|---|---|---|
| ①(低学年)過度な静寂要求 | 「動いたらダメ」「自分は迷惑」 | 自己否定/登校しぶり/反抗的行動 |
| ①-1:指示過多・自由度が少ない | 「考えるより従う」 | 自主性の欠如/依存的傾向 |
| ②(高学年)自由すぎる環境 | 「ルールはない」「感情で行動OK」 | 学級崩壊/自他境界の希薄化 |
| ②-2:感情支援の欠如 | 「気持ちは抑えるべき」「誰にもわかってもらえない」 | 引きこもり/二次障害(不安・抑うつ) |
「誤学習」を避ける支援設計とは
①経験の質をデザインする
●「できた!」「わかってもらえた!」という感覚を環境で演出。
●例:小さな達成感 → 自己効力感 → 行動の再挑戦へ。
②「動と静」の適切な導線設計
●低学年:まずは「動」→「微静」へ。
●高学年:自分で「動と静」を「選び意味づける」練習。
③メタ認知を育てる導き
●高学年では、「どうして出来たか」「どうすればもっと良くなるか」を一緒に振り返る。
●これが誤学習の「修正装置」となる。
「環境=教材(レッジョエミリア的)」である
環境設定そのものが、「子どもが何を学ぶか」に直結しています。
だからこそ、環境設計は単なる「場づくり」ではなく、「人生学習の舞台づくり」となるのです。
なぜ「空気感」が全てを決定づけるのか
✅「空気感」とは…
●子どもが「その場」を どう感じるか。
●「その場」に流れる 安心・緊張・自由・秩序・目的性 の雰囲気。
●つまり、「無意識的に学び取る、支援や空間の“メッセージ”」。
空気感=「その場にある見えない言語」
✅空気が悪い(誤りがある)と起きること
●子どもが「ここは “本気の場” じゃない」と感じる→ 悪ふざけ・逃避・感情発散の場に。
●周囲も「まぁ、このくらいでいいか」になる→ 児童生徒の熱量が低下・曖昧な境界に。
●いつしか、中途半端、何でもかんでも・・・が “当たり前” になる。
「遊び場」と「学び場」の空気の境界が曖昧だと…
たとえば──
| 状況 | 子どもの解釈 | 起きやすい誤作動 |
|---|---|---|
| 支援の設定が「お遊び」のよう | 「ここでは、好きにしてOKなんだな」 | 指示無視、責任感なし、悪態が連鎖 |
| 環境の設定が「ブレブレ」ている | 「たいして、大事でもないんだな」 | 話半分、集中力・モチベーション低下 |
| 全体に明確な「目的意識(ねらい)」がない | 「なんで私たち、ここにいるの?」 | 不安・反抗・無気力・無意味・無駄感 |
そして何より怖いのは──良質なプログラム自体が、「信頼に足るものじゃない」と、児童生徒が感じてしまうこと。
「空気感=支援の第一印象であり土台」
1.空気づくりは「場面設定」ではなく「存在そのものの哲学」
●人、モノ、コトが生み出す空気感。
●子どもへの期待と尊重がわかりやすく出ているか。
2.「ここは学ぶ場所・育つ場所」という「文化を共有」
●最初に「ここはどんな場所か」を 明文化と体感で伝える。
●ルールや自由の意味を対話的に共有する。
3.「一緒に創っている空気」を大切にする
●「支援者が作る場」ではなく、「児童生徒と共に育てる世界(空間)」。
●子どもがその空気の担い手になる構造を作る。
空気感を整える実践アイデア例
| カテゴリー | 実践例 | 効果 |
|---|---|---|
| ビジュアル | 空間に「言葉」や「シンボル」を配置(例:HOPEの木、心のスイッチ、ピーステーブル) | 場の意味づけ・安心の可視化 |
| リズム | 一日のはじまりに「空気を整える儀式」(例:マインドフルネス、合言葉、灯り) | 注意の切り替え・共通意識の醸成 |
| 対話 | 「今、この場はどう?」を共有 | メタ認知の育成、空気感の自己調整力 |
| 感情 | 「穏やかでいる覚悟」を持つ | モデリング、共鳴的落ち着き |
環境や空気感は「主任指導者」
●空気感は、最初から最後まで子どもに影響を与え続ける「目に見えない指導者」。
だからこそ、「“何をするか”より、“どんな空間で、どんな関係で行うか”」が圧倒的に大事となるのです。

