
「薬=害」と一律に決めつけるのも、「薬=正義」と盲信するのも、どちらも危うい認識です。
✅最適解:
薬は「必要な時に、最小限で、多角的な環境的支援と併用する」のがベストです。
なぜ「薬=害」と言われがち?
1.発達中の脳への影響が未知数
脳は「10歳前後まで」急速に成長。
神経回路の刈り込みなど重要な変化が起きている中で、薬によって神経伝達に介入するのは「将来の影響が予測しにくい」と言われます。
2.依存・耐性の懸念
特にADHD治療薬(メチルフェニデートなど)は中枢刺激系であり、長期投与による依存性・耐性リスクが今でも議論されています。
3.「薬だけで何とかしよう」とする社会構造
教育現場や家庭の負担軽減の為、「行動が落ち着くなら薬を…」などという圧が強まりやすい。
では薬が全て悪か?というと…
決してそうではありません。
✅薬が有効な場面:
●感情や行動のコントロールが困難すぎて、学習・人間関係・自己安定が破綻しかけている時
●他の療育・支援(TEACCH、カウンセリング等)だけでは著しく効果が出ないとき
●家族や本人が、継続的なストレス(神経性など)により共倒れしかけているとき
→ こういったケースでは、薬が「心を休ませるきっかけ」や「自分を振り返る余裕」をつくるサポートになる事があります。
最適なバランス
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 短期的に困り感が強いとき | 薬で「落ち着く時間」を作りつつ、環境性支援や関係性支援を並行して行う |
| 薬の量 | できる限り少量・短期間・段階的調整 |
| 定期的見直し | 医師と協働しながら、薬が「前に進むきっかけ」になっているか定期評価 |
| 支援方針 | 薬ありきではなく、「その子が自分らしくいられる環境・支援設計」が最優先 |
1.薬とは?
定義(WHOなどの基準):
「生体に作用し、病気の予防・診断・治療・緩和などに用いられる物質」
つまり薬は、「自然な状態から何らかの変化を与えるもの」であり、
✅科学合成された西洋薬(西薬)
✅自然由来の漢方・生薬(東洋医学)
✅準医薬品サプリや機能性食品(医薬部外品)
も広義では「薬」と見なされます。
2.薬の種類と特徴
| 種類 | 例 | 作用 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ① 西洋薬(西薬) | ADHD薬、抗うつ薬、抗不安薬、抗生物質など | 即効性・単一標的 | 科学的根拠が明確。 強力な作用と副作用の管理が必要 |
| ② 漢方薬 | 抑肝散、加味逍遙散、小建中湯など | 体質改善・調整型 | 「証(体質や状態)」に応じて選ぶ。 全身調整・長期服用で効果 |
| ③ 生薬(単体) | 柴胡、甘草、芍薬、桂皮など | 各成分が穏やかに作用 | 漢方の素材。 単体でも使えるが、処方のバランスが重要 |
| ④ 医薬部外品・機能性食品 | サプリ、グリシン、GABAなど | 栄養補助・軽度作用 | 薬よりも穏やか。 体調管理や睡眠改善などで活用 |
3.子どもの発達支援で使われる代表薬
| カテゴリ | 名称(例) | 主な用途 | 留意点 |
|---|---|---|---|
| ADHD薬 | コンサータ、ビバンセ | 注意集中・衝動制御 | 中枢神経刺激。 依存性や副作用リスクあり |
| 抗うつ薬 | SSRI系 | 不安・抑うつ・パニック | 小児など10歳以下には慎重。 希死念慮への注意 |
| 睡眠補助薬 | メラトニン(海外) | 入眠サポート | 習慣化に注意。 日本では未承認 |
| 漢方薬 | 小建中湯、抑肝散加陳皮半夏 | 腹痛、不安、癇癪、発達障害傾向 | 副作用は比較的少ないが、体質適合が必要 |
4.生薬・漢方構造
漢方薬の考え方:
「病名」ではなく「証(個々の体質・状態)」に合わせて使う
例えば、同じ「癇癪」でも――
●虚弱タイプの子には「小建中湯」
●緊張が強く怒りっぽい子には「抑肝散加陳皮半夏」
漢方の構成:
主薬(作用の核)+補助薬(副作用の軽減や全体の調和)+調和薬(体にやさしく)
「単体ではなく、全体でバランスを取る」→ チーム医療的な発想
5.西洋薬vs漢方薬(どう使い分けるか?)
| 観点 | 西洋薬 | 漢方薬 |
|---|---|---|
| 即効性 | 高い | やや遅い(1〜2週間〜) |
| 標的 | 明確・単一 | 多面的(体質・感情・全身) |
| 副作用 | 強く出やすい | 比較的少ないが「証」が合わないと逆効果 |
| 長期使用 | 議論が必要 | 比較的安全(医師と相談) |
まとめ
●薬は「脳と心に変化を与えるツール」であり、「害」ではなく「道具」
●子どもには「副作用に敏感な成長中(特に10歳以下)の身体」がある事を常に意識
●「いきなり西洋薬」ではなく、「漢方・栄養・環境支援・関係支援」との併用・先行を視野に
●薬が「安定を取り戻す一歩」になっているかを家族・本人で一緒に見極める事が大切
年齢別:薬の考え方と注意点
| 年齢帯 | 薬の使用に対する基本的な考え方 | 主な注意点・補足 |
|---|---|---|
| 0〜2歳(乳児) | 基本的に最小限・慎重対応が原則。 重症例や合併症がある場合以外は環境・生活調整を優先 | 脳神経が急激に発達中。 副作用が強く出やすい。 特に中枢神経系の薬は極力避ける |
| 3〜6歳(幼児) | 療育中心・薬は補助的に。 必要なら漢方や一部の漢方由来薬が選ばれることがある | ADHDなどの診断が早期につく事もあるが、まずは家庭・保育環境の調整を重視 |
| 6〜12歳(小学生) | 個別支援と療育+薬の併用を検討する時期。 ADHD薬や漢方、場合によっては睡眠補助も選択肢に | 西洋薬は副作用や依存性に注意。 学校生活との両立をサポートするため、使用するなら短期的に「困りごと」を和らげる手段として使う |
| 13〜15歳(中学生) | 心の不調や社会適応困難が表面化しやすい時期。 必要に応じて精神科薬の選択も | 自我やメンタルの発達と揺れが大きい。 「薬=自分が変だから」と思いこませない関わりが重要 |
| 16歳以降(高校生〜) | 自身で薬の意味を理解し始められる。 自己理解・自己選択も支援対象に | 副作用や継続の影響を一緒に考える。 将来の自己管理につなげるサポートが大切 |
特に慎重が必要な薬カテゴリ
| 薬の種類 | 年齢制限・慎重使用例 |
|---|---|
| ADHD治療薬(コンサータ等) | 一般的には6歳以上で処方可能(ただし例外あり) |
| 抗うつ薬・抗不安薬 | 小児への処方は基本的に専門医の判断が必要。 副作用に希死念慮が含まれるものも |
| 睡眠補助薬(メラトニン) | 日本では医薬品未承認だが、欧米では5歳〜投与の例もあり。 慎重に対応 |
| 漢方薬(小建中湯・抑肝散など) | 多くは体重・年齢に応じて投与量調整可。 3歳〜使用されることも多い |
年齢別使用方針例
| 年齢帯 | Guardianの基本姿勢 |
|---|---|
| 〜5歳 | 薬ではなく「育ちの土壌づくり」が最優先(生活リズム・関係性・環境) |
| 小学生 | 薬は「補助輪」として、困り感が強く長期化している時に限定的に使用 |
| 中高生 | 「自己理解」「対話」「安全な自己表現」の支援と並行して薬を位置づける |
✅まとめ(年齢別アプローチの原則)
●薬は「育ちを支える補助」であり、「発達そのものを薬で進める」ものではない
●年齢が低いほど、非薬物的アプローチ(環境・関係・心理支援)を優先
●年齢が上がるほど、「自分で選べる力」「副作用を認識する力」を育てながら薬を使う

