
小学校入学時の支援計画モデル(例)
■対象:発達障害グレーゾーン(境界知能+注意特性)の年長児
■進学予定校:千葉市立〇小学校
✅1. 基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 氏名 | たかはし りく(仮名) |
| 年齢 | 6歳 |
| 保育園/園 | 〇〇こども園(年長) |
| 診断歴 | なし(WISC-IV: IQ74) ※境界知能域、ASD・ADHDグレーゾーン |
| 特性 | ・切り替えに時間がかかる ・衝動的な言動あり ・不安が強く、初対面に萎縮傾向 ・絵や身体を使った表現は得意 |
✅2. 支援の基本方針
「不安を安心に変え、安心を自信に変える」を合言葉に小学校という新しい環境でも、安心して挑戦できるように整える。
✅3.就学前の準備(年長3学期~春休み)
| 項目 | 支援内容 |
|---|---|
| 学校見学・慣れ | ・放課後や休日を活用し、校内を親子で見学 ・担任予定の先生と顔合わせの場を設ける |
| 就学相談 | ・市の就学相談を活用(1月) ・通常級+通級支援 or 支援級の方向性確認 |
| 生活スキル | ・ランドセルを使った模擬通学練習(玄関→机まで) ・持ち物リストを視覚化 |
| 交流準備 | ・入学説明会で「できる事・苦手な事」メモを教員に共有 ・Gカメさんのような安心アイテム(お守り)を持たせる計画 |
✅4.小学校入学後の支援(1年生前期)
| 領域 | 支援目標 | 支援方法 |
|---|---|---|
| 学習 | 「安心して授業に座っていられる」 「発言や作業の成功体験を積む」 | ・机の位置は前列・端など低刺激な場所に ・発表時は選択式にする or カードを使う ・タブレット活用でスモールステップ学習 |
| 行動 | 「衝動的な言動を予防・リカバリーできる」 | ・困った時の『合図カード』導入 ・気持ちのリセット場所(静かなコーナー)を準備 |
| 心理 | 「安心・安全感を確保し、自信の芽を育む」 | ・朝のルーティン安定化(1日の見通しボード) ・成功体験が得られる“得意な活動”を時間割に入れる |
| 家庭連携 | 「家庭と学校が繋がり、子の状態を見守る」 | ・連絡ノート or LINE相談対応(ICTでの共有) ・月1回の面談 or Guardianの支援員と連携 |
✅5.支援体制マップ(関係機関と役割分担)
| 役割 | 担当 | 主な支援内容 |
|---|---|---|
| 担任教員 | 〇〇先生 | 日々の支援・個別対応・観察記録 |
| 通級指導教員 | △△先生 | 読み書き・集中・ソーシャルスキル支援 |
| 児童相談支援(Guardian) | ◇◇相談員 | 支援計画モニタリング・家庭支援・行政連携 |
| 保護者 | たかはし様(仮名) | 家庭での環境調整・連絡ノート記録 |
| スクールカウンセラー | 市の派遣 | 必要時の心理支援・家庭相談 |
✅6.今後の見通し
●1年生前期は「安定・安心の定着」に注力。
●通級や支援級との連携は継続検討し柔軟調整。
●年1〜2回、地域包括支援会議(チーム会議)を設定し、本人の状態に応じて全体支援を更新。
進級時の支援計画モデル例(10歳の壁)
■対象:小学3年生(進級時に4年生)、ASD+境界知能(IQ82)
✅1.基本プロフィール
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 氏名 | さとう ゆう(仮名) |
| 年齢 | 9歳(小学3年)→進級予定:小学4年 |
| 在籍 | 支援級(算数・国語のみ在籍)、その他は交流級 |
| 特性 | ・ワーキングメモリが弱く、話が長くなると混乱 ・失敗への恐れが強く、チャレンジを避けがち ・変なところで空気を読みすぎて疲れやすい ・趣味は図鑑・昆虫・ロボット、語彙力はわりと高いが偏り有り |
| 保護者 | 自営業(母子家庭)、理解と協力あり |
| 外部支援 | Guardian(相談支援)、通級支援(週1・ソーシャルスキル) |
✅2.年齢・発達課題に応じた支援の主眼
| 領域 | 主な壁 | 重点支援 |
|---|---|---|
| 学習 | 「抽象概念」や「複数手順」の理解が求められ始める | ・図解・フローチャート活用 ・ICT(動画解説・スライド型教材)で可視化 |
| 心理 | 周囲の“差”に気づき、自尊感情が揺らぐ | ・「得意」を全力で認めるフィードバック支援 ・感情表現とセルフモニタリングの練習 |
| 社会性 | グループワーク中心で協調力が求められる | ・役割分担を事前に明確化する ・「失敗OK」の、安心な練習の場を確保 |
✅3.支援ゴール(4年生中期までの目標)
| 分野 | 目標 |
|---|---|
| 学習面 | ・自分に合った学習方法を1つ以上確立 ・宿題・テストで成功体験を月2回以上得る |
| 行動面 | ・1週間を通して、落ち着いて話を聞く時間が増加 ・「困った時に助けを求める」力を育む |
| 心理面 | ・「自分には得意も苦手もある」と受け入れ始める ・「やってみよう」が自然に出るように |
✅4.支援内容と実施体制
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 担任対応 | ・視覚支援(今日の予定カード) ・1日1回“できたことメモ”を本人に返す |
| 支援級支援 | ・学習内容の“かみ砕き”を定着支援 ・書き取り補助(タイピング練習も可) |
| Guardian・通所支援 | ・月2回の個別セッション(心理支援) ・「自信貯金帳」導入 ・小集団でのソーシャルスキルトレーニング |
| 家庭支援 | ・成功体験シェアノート(家庭↔Guardianで交換) ・ご家庭でも「できた事を見える化」 |
| その他 | ・月1回のチーム会議(担任・支援級・Guardian・保護者) ・必要に応じて外部医療との連携も視野に |
✅5.自信を取り戻す仕掛け(例)
| アイテム | 内容 |
|---|---|
| ? 自信貯金帳 | できたこと・がんばったことを本人がシールや絵・トークンで記録する。 累計でバッジやポイント付与。 |
| ? Gカメさん通信 | 「見守ってくれてる」存在として、Gカメさんからのメッセージ(音声 or メモ)を週1回届ける |
| ? 選べるチャレンジタイム | 「得意科目チャレンジ」や「自由工作タイム」など、自分の“得意”を前面に出せる時間を導入 |
✅6.今後の展望
●4年生の間は 「挑戦と安心の両立」を重視
●5年生に向けて、グループ活動・発表活動に少しずつステップアップ
●中学進学を見据え、学習スタイルの自立支援も継続
中学進学時の支援計画モデル(例)
■対象:小学6年生女子(IQ85+発達障害+軽度自閉)
✅1.基本プロフィール
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 氏名 | はなだ みお(仮名) |
| 年齢 | 12歳(小6) |
| 支援歴 | 支援歴なし(通常級在籍) 幼児期に軽度のASD傾向:こだわり・空気感過敏・友達を大切にする |
| 特性 | ・周囲に強く合わせすぎる(マスキング傾向) ・言語・処理力ともに平均〜やや下だが生活力は高め ・集団になると極度に緊張、失敗に強い羞恥反応あり ・登校渋り傾向の出始め(週2回「お腹が痛い」と訴える) |
| 家庭 | 母子家庭、母は仕事をしながらも支援に前向き(ただし不安も大) |
✅2.想定される中学進学時のリスク
| リスク | 内容 | 対応方針 |
|---|---|---|
| 登校渋り | 新しい環境・人間関係・空気感刺激に過敏で、心理的負荷が高い | 「無理なく登校できる仕掛け」と「安心の逃げ道」を準備 |
| 二次障害 | マスキング過多による自己否定・抑うつ傾向 | “周囲に合わせない”が肯定される空間づくり |
| 学力ギャップ | 課題の量やスピードについていけず、自己効力感の低下 | タブレット・構造化学習・選択式テストで対応 |
✅3.在籍と支援形態の選択肢
| 選択肢 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 普通級+通級 | → 進路の幅が維持される → 環境整備ができれば最適 | 担任による個人差が大きく、支援が届かない可能性あり |
| 支援級 | → 環境調整がしやすく、登校しやすくなる | マスキングせずに安心できる反面、一般受験が難しくなり、進路は限られる可能性 |
本人が「学校に行けないくらい苦しい」状態になるくらいなら、支援級を選ぶ勇気も必要。
→ ただし、「学籍は普通級・支援級とのハイブリッド」など、柔軟な設計がベストプラクティス。
✅4.中学での支援計画モデル(普通級在籍+通級活用)
目標:「安心できる居場所で、自分らしく挑戦を続けられる環境づくり」
| 領域 | 支援内容 | 担当 |
|---|---|---|
| 教室環境 | ・座席配置(刺激の少ない窓際や後方) ・イヤーマフ・音楽プレイヤーなど感覚過敏対応 | 担任+支援員 |
| 学習支援 | ・定期テストは選択問題+時間延長を検討 ・iPadでの読み上げ・作業サポート ・課題の分割提示(1枚ずつ渡すなど) | 担任+特別支援コーディネーター |
| 心理的支援 | ・Gカメさん通信(週1、気持ちカード) ・週1の通級+週2の保健室立ち寄りOK制度 ・「朝だけ登校」や「午後登校」の柔軟対応 | 通級教員+Guardian相談支援 |
| 家庭支援 | ・登校困難時の家庭支援とLINE連絡体制 ・母親の不安ケア(Zoom面談・見通し提示) | Guardian相談支援+スクールカウンセラー |
| 社会性支援 | ・「グループ活動不参加も選択OK」なルールの導入 ・“少人数での参加” の場面設定(事前説明あり) | 担任+通級教員 |
✅5.特別措置とトラブル予防策
| 状況 | 対応例 |
|---|---|
| 朝に登校できない | ・午前は自宅学習 or 保健室で学習(担任に事前連絡) |
| 空気感がつらい/パニック | ・Gカメさんルームに一時避難可(担任・保健室対応) |
| 授業中の不安・涙 | ・言葉にできない時は「気持ちカード」を提示 → 支援員が対応 |
✅6.Guardianの支援案(3年間モデル)
| 学年 | 支援内容(要点) |
|---|---|
| 中1 | ・通学とメンタル安定の両立が主軸 ・「不登校にならない仕掛け」重視 |
| 中2 | ・得意の見える化支援(ポートフォリオ作成) ・自己理解とキャリア探索 |
| 中3 | ・進路に合わせた個別型支援(推薦面談練習、ICT活用学習) ・「行ける学校(高校等)」ではなく「居られる学校」を選ぶ支援 |
✅7.進路への影響と備え(支援級を選ばなかった場合)
| 内容 | 備え |
|---|---|
| 通知表(内申)は通常扱い | → 欠席日数、提出物、グループ活動の評価に影響する為、「本人が出来る形での参加」が鍵。 |
| 推薦や面接で不安がある場合 | → Guardianで「自己PR文」「面接練習」などをサポート。 自分を説明できる経験値を積む。 |
| 学力が不安でも学校(高校等)進学は可能 | → 通信制・定時制・サポート校・特例高校など選択肢多様。 本人の希望に合わせ柔軟に進路設計 |
✅まとめ:
「どんなクラスに入るか」ではなく、「どんなふうに安心して自分を出せるか」が最優先の視点。
二次障害を予防し、将来に繋がる「自信の根」を育むには、「逃げ道」ではなく「戻れる道」が、常にある支援設計が必要です。
Guardianより…
私たちは、一人ひとりの「生き方」と「選び方」が「違っていて良い」と考えています。
ここで紹介する支援例は、その道しるべの一つにすぎません。
誰かの正解が、別の誰かにとっての正解とは限りません。
だからこそ、その子の「らしさ」に寄り添った支援が大切だと、Guardianは信じています。

