成年後見制度

後見人・保佐人・補助人とは

〜未来を守るために、今からできる静かな準備〜

日々の子育ての中で、「うちの子はちょっと不器用だけど、元気に学校へ通っているし、特別な制度はまだ必要ない」と感じることは自然なことです。

特に、境界知能や発達障害のあるお子さんは、見た目や日常の様子では支援の必要性が見えにくく、周囲からも「普通に見える」と言われることが多いかもしれません。

けれども、社会の中には、判断力の弱さにつけ込むような契約や詐欺まがいのトラブルも少なくありません。

進学、就職、携帯電話の契約、クレジットカード、SNS、ネット通販・・・

そうで無くても、昨今の社会的背景に鑑み、法的トラブルを懸念したリーガルアクセス(弁護士特約など)への需要が高まっています。

子どものうちは保護者が法的責任者であっても、大人になるにつれて「自分で決断し行動する」場面は増えていきます。

そのようなイザというときに、精神的・法的に支えてくれる人の事を「成年後見人・保佐人・補助人」といい、その存在が安心安全に繋がることもあるのです。


成年後見制度とは

成年後見制度は、判断力に不安のある方が、社会の中で安心して暮らしていけるように、家庭裁判所などが「支援者」を選び、精神的・法的に支えてくれる制度です。

支援の内容や重要度によって、3つの種類があります。


日々の履歴や記録が重要

制度を使うには、「本当に支援が必要かどうか」を家庭裁判所に伝える必要があります。

でも、境界知能や発達障害のある方は、診断名がつかないことも多く、制度につながる根拠が不足しがちです。

そこで大切なのが、小学生のうちからの記録の積み重ねです。

これは、成年後見制度の活用に限った事ではありませんが、「何かあったときのため」ではなく、何も起こらないようにする(安心安全に生活する)ための静かな備えでもあります。


親なきあとに備えるために

保護者の方が元気なうちは、生活の中で自然にサポートすることもできます。

でも、将来お子さんが一人で契約やお金の管理をしなければならない場面が来たとき、法的な支援(成年後見制度など)が必要になることがあります。

そのときに、「今までの記録」があるかどうかで、制度の利用可否が大きく変わります。

記録があれば、裁判所が「この方には支援が必要だ」と判断しやすくなります。

逆に記録がなければ、「支援が必要なのに制度につながらない」ということも起こり得ます。


今日からできること

〜将来の支援につながる、日々の積み重ね〜

●担当する相談支援事業者との連携記録

●発達検査の結果

●医師の診断書・通院歴

●障害福祉等法制度の申請・利用記録

●放課後等デイサービスなどの利用記録

●学校等での支援計画やサポート交渉・調整記録

●家族・支援者の観察記録

●契約・金銭管理等の困難記録

●進路・就労等の支援記録

●その他


18歳以降を見据えた「本人にできること/できないこと」の整理

■日本では、18歳からが成人年齢となり、契約行為(スマホ・クレジット・ローン・アパート契約など)が 親の同意なしで可能 になります。

■発達障害・境界知能のある若者は、「表面的には理解しているように見える」ため、契約や金銭管理においてトラブルに巻き込まれやすいと報告されています【消費者庁・若年消費者被害調査】。

領域できる可能性が高いこと難しくなりやすいこと注意点
金銭管理日常の買い物、定期的な支払い(例:交通系IC)収入と支出のバランスをとる、クレカ・ローン・サブスク契約消費者被害や借金リスク。少額でも繰り返すと大きな負債に。
契約理解利用するサービスの表面的な内容を理解契約条項・違約金・長期契約のリスクを理解スマホ・オンラインゲーム課金・マルチ商法など被害事例が多数。
医療・福祉サービス通院や服薬の習慣を守る複数機関との連携、制度更新手続き(自立支援医療・年金など)支援者や家族が定期的に関与しないと途切れやすい。
社会生活通勤・通学ルートの固定利用突発的トラブルや新しい場面での判断公共交通のトラブル対応、職場・バイトでの人間関係など。

■「うちの子はできる/できない」を漠然と考えるのではなく、生活領域ごとを具体的にリスト化すると見通しが立ちやすい。

■家庭だけで判断せず、相談支援専門員・学校・放デイなどと一緒にチェックすることが望ましい。

■難しい部分が明確になれば、自律・補助・保佐・後見といった選択に直結しやすい。


発達障害・境界知能にある若年層での、成年後見制度の利用動向

現状の統計:

■成年後見制度全体の申立件数は 年間約41,841件(令和5年度、最高裁統計)

■発達障害・境界知能にある若年層の利用は「少しずつ増加」していると裁判所・厚労省の資料では発表されています【厚労省 成年後見制度利用促進法関連報告】。


若年層でのニーズ拡大要因:

1.18歳成年化(2022年施行):

■親の同意なしで契約できる年齢が20歳→18歳に引き下げられた。

■発達障害や境界知能の若者が、社会に出てすぐにトラブルに巻き込まれるリスクが急増。


2.消費者被害の多発

■消費者庁によれば、若年層(20歳未満)の消費者被害相談は年間数万件規模。

■特にオンラインゲーム課金やサブスク、エステ・通信教材など「高額契約」が目立つ。


3.地域支援体制の拡充

■各自治体で「成年後見センター」「法人後見事業」が設置され、若年障害者への支援が想定され始めた。

■親亡き後に備えたニーズ調査や、法人後見への引き継ぎ事例が増加。


将来の見通し:

■高齢者後見と同様に、若年層の成年後見利用件数も右肩上がりになる可能性が高く示唆。

■特に「親が元気なうちは何とかなるが、親がいなくなった後に困る」という課題が顕在化。

■早期に準備し枠を確保しておけば、被害を防ぐだけでなく「本人の意思を活かしつつ守る」形で制度を利用できる。


まとめ

①本人の「できること/できないこと」を生活領域ごとに整理することは、将来の自立支援と法的支援の設計図になる。

②若年層の成年後見制度利用は拡大傾向にあり、親亡き後の安心のために早めの準備が重要。

18歳以降のライフステージを具体的かつ建設的にマネジメントし備えるのが自然な流れ


最後に

この制度は、「困ってから使うもの」ではなく、困らないようにするための備えでもあります。

そして、記録は「制度のため」だけではなく、お子さんの成長を支える大切な足跡でもあります。

成年後見制度の活用に限らず、お子さんが安心して社会に出ていけるように、静かに、でも確実に、準備を進めていけたらと思います。

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