ロボット?


TEACCHABAの指導手法には、「ロボット的」と云う賛否両論が話題となることがしばしあります。

確かに発達障害や境界知能を持つ児童生徒の「困り感を減らす」為にも、非常に有効な手法とされていますが、それは「その子らしさ」「人間らしさ」無視して良いという話では決してありません


TEACCHやABAの本質は支援のツール」

TEACCHは、構造化された環境の中で、安心して自立できる力を育てる為の枠組みです。

ABA(応用行動分析)は、「行動の原理」に基づいて望ましい行動を増やし、望ましくない行動を減らす手法です。

→ どちらも”道具”であり、目的ではありません。


ロボット的になる? それは「使い方次第」

ABAなどが誤解されがちなのは、「報酬と刺激」で人をコントロールしてしまうようなやり方が「先行」した場合です。

「行動を揃える」事にばかり意識が向くと、子どもたちが「感情を置き去り」にされる事もあります。

でも、本来の目的は──

その子が「自分らしく」「心地よく」社会の中で生きていける方法を一緒に探る事。


「ロボットにならない支援」の為に必要な視点

1. その子の願いや興味を尊重する(主体性)

2. 喜び・楽しさ・達成感を伴わせる(感情)

3. 対話・関係性の中で支援を築く(共感)

4. 「できる」 を強制するのではなく、「助ける」 姿勢で(人間味)。


支援モデル例

「HEART(ハート)モデル」

Human – Emotional – Adaptive – Relational – Transformational

「行動だけではなく、心を育て、物語を共に歩む支援」


モデル構成:5つの柱(TEACCH & ABA融合+Guardian哲学)

1. H = Human:その子“らしさ”の尊重(個別化)

TEACCHの「構造化」を活かしつつ、「その子の世界観」に合わせて設定。

●行動ではなく「その子の願い・背景・人生のストーリー」に注目。

●例:スケジュールではなく「その子の1日が安心と楽しみで満たされる道しるべ」


2. E = Emotional:感情の認識・表現・共感を育む

ABAでの「行動強化」「感情のラベリング」「共感的関わり」を融合。

●誰かの役に立つ「ありがとう」を言われる経験を意図的(と悟られないよう)に設定

●例:「”ありがとう”って言われたとき、どんな気持ちになった?」を言語化する支援。


3. A = Adaptive:現実に適応する力と「希望」を両立

●「出来るようになる」事を押し付けない。自分で選びながら「出来る」を増やす。

ABAの「強化子」「希望」や「夢」と結びつけて設定する。

●例:「猫カフェの店員さんになりたい!」をゴールに、数や挨拶、衛生管理のスキルを育てる。


4. R = Relational:関係性をつくる力

●支援者や仲間との「繋がり」の中で社会性を育む。

TEACCHの「視覚支援」+ABAの「スモールステップ」+Guardianのファミリー精神

●例:「Gカメさんとの交換日記」「自分のことを絵で紹介するワーク」など、感情を通わせる活動。


5. T = Transformational:物語的成長と意味の再構築

●行動が「点」ではなく、「線(ストーリー)」 として積み上がる設定

●失敗も挫折も物語の一部ととらえ、生きる本質の構築をサポート。

●例:「昔は話せなかったけど、今は “だいじょうぶ?” って言えるようになった。」事を称えるドキュメンテーションの作成。


HEARTモデルの特徴まとめ

項目内容
ベースTEACCHの構造化+ABAの行動分析+Guardianの哲学
感情・物語・つながり
目的「人としての生きやすさ」と「自分らしい幸福」
手法視覚支援/強化子/ナラティブ支援/遊びと実践の融合
関係支援者 ≠ 指導者(フラットな目線)、共に歩む “仲間”

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