
TEACCHやABAの指導手法には、「ロボット的」と云う賛否両論が話題となることがしばしあります。
確かに発達障害や境界知能を持つ児童生徒の「困り感を減らす」為にも、非常に有効な手法とされていますが、それは「その子らしさ」や「人間らしさ」を無視して良いという話では決してありません。
TEACCHやABAの本質は「支援のツール」
●TEACCHは、構造化された環境の中で、安心して自立できる力を育てる為の枠組みです。
●ABA(応用行動分析)は、「行動の原理」に基づいて望ましい行動を増やし、望ましくない行動を減らす手法です。
→ どちらも”道具”であり、目的ではありません。
ロボット的になる? それは「使い方次第」
ABAなどが誤解されがちなのは、「報酬と刺激」で人をコントロールしてしまうようなやり方が「先行」した場合です。
「行動を揃える」事にばかり意識が向くと、子どもたちが「感情を置き去り」にされる事もあります。
でも、本来の目的は──
✅ その子が「自分らしく」「心地よく」社会の中で生きていける方法を一緒に探る事。
「ロボットにならない支援」の為に必要な視点
1. その子の願いや興味を尊重する(主体性)。
2. 喜び・楽しさ・達成感を伴わせる(感情)。
3. 対話・関係性の中で支援を築く(共感)。
4. 「できる」 を強制するのではなく、「助ける」 姿勢で(人間味)。
支援モデル例
「HEART(ハート)モデル」
Human – Emotional – Adaptive – Relational – Transformational
「行動だけではなく、心を育て、物語を共に歩む支援」
モデル構成:5つの柱(TEACCH & ABA融合+Guardian哲学)
1. H = Human:その子“らしさ”の尊重(個別化)
●TEACCHの「構造化」を活かしつつ、「その子の世界観」に合わせて設定。
●行動ではなく「その子の願い・背景・人生のストーリー」に注目。
●例:スケジュールではなく「その子の1日が安心と楽しみで満たされる道しるべ」。
2. E = Emotional:感情の認識・表現・共感を育む
●ABAでの「行動強化」に「感情のラベリング」や「共感的関わり」を融合。
●誰かの役に立つ「ありがとう」を言われる経験を意図的(と悟られないよう)に設定。
●例:「”ありがとう”って言われたとき、どんな気持ちになった?」を言語化する支援。
3. A = Adaptive:現実に適応する力と「希望」を両立
●「出来るようになる」事を押し付けない。自分で選びながら「出来る」を増やす。
●ABAの「強化子」を「希望」や「夢」と結びつけて設定する。
●例:「猫カフェの店員さんになりたい!」をゴールに、数や挨拶、衛生管理のスキルを育てる。
4. R = Relational:関係性をつくる力
●支援者や仲間との「繋がり」の中で社会性を育む。
●TEACCHの「視覚支援」+ABAの「スモールステップ」+Guardianのファミリー精神。
●例:「Gカメさんとの交換日記」「自分のことを絵で紹介するワーク」など、感情を通わせる活動。
5. T = Transformational:物語的成長と意味の再構築
●行動が「点」ではなく、「線(ストーリー)」 として積み上がる設定。
●失敗も挫折も物語の一部ととらえ、生きる本質の構築をサポート。
●例:「昔は話せなかったけど、今は “だいじょうぶ?” って言えるようになった。」事を称えるドキュメンテーションの作成。
HEARTモデルの特徴まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ベース | TEACCHの構造化+ABAの行動分析+Guardianの哲学 |
| 核 | 感情・物語・つながり |
| 目的 | 「人としての生きやすさ」と「自分らしい幸福」 |
| 手法 | 視覚支援/強化子/ナラティブ支援/遊びと実践の融合 |
| 関係 | 支援者 ≠ 指導者(フラットな目線)、共に歩む “仲間” |

